アイテム詳細
この商品を買った人はこんな商品も買っています。
ELTON JOHN&TIM RICE’S アイーダ(劇団四季)(CCCD)
カスタマーレビュー ![]()
二つの架け橋
(2008-11-23)
『李香蘭(=山口淑子)』という名前を聞いて、リアルタイムでその時代を思い出すことの出来る世代はかなりの年配の方々である。この物語は一人の女性が生きた半生にその時代背景(日中戦争)を重ね合わせて描いた作品である。物語は1945年の上海軍事裁判所に喚問された一人の女性が語る回想をベースとして展開する。日本人でありながらその容姿と才能ゆえに作り上げられた女優“李香蘭”は同時にもう一つの作り上げられた国家“満州国”の象徴でもあった。彼女自身の願いは唯一つ、日本と中国、二つの祖国が互いに協力し平和な世界を創ることだけだった。だがしかし彼女の願いとは裏腹に日本と中国は戦争への道を進んでゆく。それも彼女の祖国、日本による中国への侵略という最悪の形で。物語は戦争に至る道程を丹念に描き出し、モノを言えなくなる怖さに警鐘を鳴らす。そして無謀な戦争の結末はこの国の未来を造るべき唯一の財産ともいえる若者達の命を戦場に駆り立てることを静かな怒りで示す。力で相手をねじ伏せても、それは決して相手を従属させることなどできはしない。このことは時を経た今でも通じる歴史の教訓そのものである。一つの価値観を相手に押しつけることの意味、そして平和を守り育てていくことの難しさ、けれどそれが何にも代え難い財産であることがこの作品に底通するポリシーである。この作品は自らと相手、そして戦中世代から戦後世代へ渡された二つの架け橋である。実際に劇場でこの作品を見る度に、そこでは二つの世代の涙に逢うことができる。上の世代はあの時代を創ってしまった自らの悔恨と鎮魂の涙、今の世代のそれは自らが知らなかった過去に対する無知を後悔する涙。李香蘭は二つの世代にメッセージを遺す。それは互いに理解することの必要性。それは時として意見の対立を生むこともあるが、それを越えて本当の意味での相互理解が生まれる。平和への願いは小さな努力からこそ生まれる。出来れば劇場でこの作品に接することをお奨めするが、今回劇団四季が自らの作品に自信を持って発表し続けているオリジナル作品での最高峰である。是非1度、この作品を観て、家族、友人達と『平和』を考える糧としてほしい。

