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カスタマーレビュー ![]()
人間は「狂った動物」である。
(2008-08-30)
ハンガリー映画史上最高額の費用を投じて製作された、奇妙奇天烈で真面目な人間ドラマ。
取り上げられるネタは自慰/ゲロ/剥製とお世辞にもお上品と言えるものじゃありませんが、テーマは深いですよ。
祖父と父はそれぞれ性と食という「生」に纏わるオブセッションが畸形的に膨れ上がった人達。
孫は剥製という「死」或いは「生の反転」へのオブセッションに囚われた精神の畸形。
この孫のエピソードのみがパールフィ・ジョルジ監督のオリジナルで(祖父・父の物語はパルティ・ナジ・ラヨシュの小説が原作)、三代に渡る血脈の中で孫の立ち位置のみ毛色が違います。
孫のパートは監督自身の世界観を挿入したものだそうですが、現代を舞台にしており、現代人の神経症的な潔癖さ、サニタリーで医療フェチな感覚があって個人的には一番共感しやすいエピソードでした。
というか…祖父の○ン○から火吹きとか、ありえん。
父は大食という才能を活かし、国家の威信をかけて戦うアスリートとなるのですが、食うことは彼にとって単に競技という手段を超え、自己の存在意義になってしまいます。
動物は自己を複製するために生殖し、自己の生命を維持するために食べます。
けれども性の妄想によって己の惨めな生に救いを求めたり、食べることにアイデンティティを懸けたりは決してしない。
こういった習性を捉えて、岸田秀はヒトを「本能の壊れた動物」と呼びました。
その「本能の壊れた動物」の壊れた姿・取り憑かれた存在としての滑稽と悲哀を執拗に描くことが、この『タクシデルミア』の真のテーマでしょう。
際限なく繰り返される自慰や嘔吐は、それを絵にする手段に過ぎない。
だからそれらはクールに、ある意味突き放した視線で描かれています。
クールで冷徹な映画です。
孫のパートに登場する、自己をアレする自動機械(東欧繋がりで、カフカの『流刑地にて』を連想させますね)の冷たく精緻な描写にも、それが端的に現れています。
アモン・トビンによるトライバルで鋭角的な劇伴音楽も魅力的であることを、申し添えておきます。

